三島の人たちのおしゃれについて、どう感じていらっしゃいますか?
目が肥えてらっしゃると思いますね。東京や横浜や静岡に出られる方も多いので、色々なものに触れていらっしゃる方が多いです。それでも、中にはお仕事やご自分のライフスタイルに対してどんなコーディネートがいいのか迷ってらっしゃる方もいるので、そういった方たちに僕らはお役に立てるんじゃないかなと思います。
僕は洋服屋として信頼できる人になりたいんです。「お似合いですよ」って簡単に言うんじゃなくて、きちんと「ダメ」って言ってくれる方が実際にはお客様のためになると思うんです。
洋服ってうまく使うと自分の武器になるし、使い方を間違えると自分で自分の価値を下げてしまうこともあるんです。だから、装う上でメリットとなるアドバイスをみなさんにお伝えできればなと思っています。ご自身が、「装いによって自信を持てる」というのが基本の考え方になります。その上で、例えば仕事で上司に対してプレゼンする時にはこう、取引先を説得するときにはこう、といった相手に対して印象をプラスするような装いを提案します。お仕事においてもプライベートにおいても、その方の人生が少しでも良くなることが僕らの仕事の存在意義ですね。
もちろん毎回買っていただくお客様もいらっしゃるし、お洋服を見にいらしておしゃべりするだけの方もいらっしゃいますよ!確かに百貨店さんとかと比べると入りにくいですよね。売りつけられそうとか、高いものばかりありそうとか、試着したら買わなくちゃいけない、というイメージ(笑)そんなことないんですよ。接客は自分がされて嫌なことはしたくないし、自分たちが体験したいと思えるような接客を心がけています。ただ売るのではなく、お客様の趣味や近況の話を聞かせていただいて、僕自身その会話を楽しんでやっているところもありますね。
僕らとしてはウェルカムなので、気になさらずいらしてほしいですね。特別なことはできないですけど、お洋服を見ている間はお子さんにiPadでアニメを見てもらったり、僕も子ども好きなのでお相手させてもらいます!僕は五味八珍(中華ファミリーレストラン)が掲げている「お子さまはどんどん汚してください。そしてそのままでどうぞ。」というキャッチコピーがすごく好きなんです。自分たちもこれまでそうやって見守られて育ってきたので。

顧客のみなさん、それ以外の方もお呼びして楽しむ会をやりたいなと思ったんです。僕がやりたいのはそういった「装いの場」を提供することなんです。
――確かに、普段の生活だと結婚式くらいしかおしゃれして出掛ける機会がないんですよね…
そうなんです。うちのお客様の中にも「こういうワンピース欲しいんだけど、着て行く場所がないのよね」っておっしゃる方が多いんです。「じゃあ、そういう場を作っちゃおう!」って思ってパーティを開いたんです。単なる飲み会とは違う、価値のある場の提供ですね。
大人がおしゃれをして楽しむ場が増えれば、地元の経済も豊かになります。わざわざ東京に行って社交しなくたって、地元にそういう文化が育てばいいんだと思います。
12月にはドレスアップクリスマスパーティも開催しますよ!
※下記Information参照
――三島の某ホテルの方は、ホテルをもっと「気軽におめかしして出掛けられる場所」にしたいとおっしゃっていました。
そういうホテルの方たちともコラボレーションしていけたらいいなと思っています。僕が一人で全部やるというよりは、その道のプロを巻き込んでやるのがいいですよね。会場はホテルが、お洋服は僕たちがという風にそれぞれの強みを活かしていく。周りにいる同志たちを巻き込んでチームを作って、たくさんのお客様に喜んでもらいたいですね。こういうコラボレーションのような形が地方の活性化の理想形ではないでしょうか。
14年間三島を離れて東京で仕事をしていました。4年前に三島に戻って来てから、新たに人脈作りを始めました。ずっと三島にいなかったので、仕事上のつながりはほぼゼロに近かったです。
経営者団体に入ったというのも一つのきっかけではあるんですけど、それだけではないですね。とりあえず「誘われたら必ず行く」という姿勢で臨みました。知り合いが少ないアウェイな場に行くのって勇気がいるじゃないですか。でも14年も三島を離れていて、僕という存在を誰も知らないから焦りがありましたね。だから、そういうことをやりまくりました(笑)郷に入れば郷に従えというか、自分をさらけ出して、そういう全く知らない所に飛び込んでいきましたね。
――石川さんと違って人見知りで、そういうことが苦手な方もいらっしゃると思います。そういう方へアドバイスはありますか?
人によって性格も違うし、みんながみんな僕と同じようにやる必要はないと思うんですけどね。でも一つ言えるのは、とにかく思い切って行動することですね。行動して恥ずかしい失敗を積み上げていけばいいんです。それに、おしゃべりは下手でもいいと思います。物静かでも重みのある話し方をする方っていらっしゃいます。誰にだって得意なことってあるので、それを自分オリジナルの強みとしてアピールできればいいんです。決して人真似ではない、自分の強みをまず見つけることですね。それに自分で気付けていない人は、恥ずかしくても周りの人に聞いてみるといいですよ。
藤原さん※デザインのお店がかっこいいということで来ていただける方が増えましたね。一番多いのは「前からずっと気になっていて、やっと今日来ました」とおっしゃってくださる方ですね。車で通りかかった時や、歩いている時に見つけてくださるんですね。すごくうれしいです。本当に藤原さんのおかげですね。
※藤原 慎一郎(1972-2015)|有限会社ケンブリッジの森 主宰・空間デザイナー
藤原さんと石川さんのエピソードを紹介した対談記事はこちら。

藤原さん・石川さん対談.jpg |
自分が子育てをするんだったら絶対に戻りたい街だと思っていました。家族と東京で暮らしていくっていうイメージは湧かなかったんです。そして三島はもっとおしゃれになる可能性があって、そういう街の姿が想像できました。それにはうちのお店を藤原さんデザインで改装してもらわなきゃって、そこまで考えていましたね。
藤原さんは決して妥協しない人で、地元に対する想いやこだわりも僕と同じだったんです。デザインはもちろん東京でも通用するような良いものを提案してくれるんだけど、それだけじゃなくて人の成長を大事にしてくれるようなところがありましたね。
三島に戻ってきてから、僕はこの4年間でたくさんの失敗をしてきたんですけど、それは成長の糧として活かすことにしています。チャレンジして失敗するよりも、行動しない自分の方が嫌なんですね。やらなくて後悔するよりはやって後悔した方がいい。そうでなければ4年前に丸井は辞めていなかったと思います。丸井を辞めて家業の店を継ぐことは周りに大反対されていたし、36歳ということでキャリアも体力も能力も絶頂のときでしたからね。
――そこまで石川さんを突き動かした原動力とは?
「人生一度きり」という想いです。自分がチャレンジせず、そのまま人生を終える姿を想像したんですよ。そんなの後悔の念しかないですよね。チャレンジしなかったら、自分のことを情けない奴だって残りの人生ずっと責め続けていましたよ。みなさんの助けがあったことと、運が良かったおかげで今は何とか結果オーライになっていますけどね。日本という恵まれた国に住んでいる以上「死にやしない」という想いもありましたね(笑)仕事を辞めたからって死ぬわけではないし、どんな仕事をやってでも家族を食べさせていけるとは思っていました。
頑張る人が多いので、もっともっと変わっていくと思います。気候や人柄の良さといった素地があるわけですから、そういった街の良さを活かしていければいいですね。僕の目標は三島にかっこいい物販店を増やすことなんです。三島にはがんばっている飲食店さんは多いですけど、正直、物販店さんはそこまで多くないと思うんです。例えば、同業者でもいいのでみんなを巻き込んでファッションショーをやるとか、もっとコラボレーションしたらいいんじゃないでしょうか。中にはうちのお店ががんばっていると「お客さんを取られちゃう!」って言う同業者さんがいるんですけど、そうじゃなくてもっと柔軟に想像してほしいんです。お客さんを取り合うライバルって、何も同業者だけではないはずです。外食産業が洋服屋のライバルかもしれないし、携帯電話屋がライバルかもしれない。だって家庭の財布はひとつなんだから(笑)そういう視点で見れば、別に同業者だからどうのこうのっていう話ではないと思います。競合するのではなく協調して、お客様が求める新しいものを生み出すことがこれからの新しい時代にすごく必要なことです。古い思い込みをなくしていかないといけないですね。ビジネスがうまくいかないときは経営者自身の思い込みが強すぎる時だと思うんです。こうじゃなきゃいけない、こうあるべきだって。そういうギスギスした人のところに人は集まって来ないと思うんですよね。お客さんにしてもビジネスパートナーにしても、やっぱり人って協調できる人の所に集まるものなんじゃないでしょうか。
――石川さん自身がこれからやりたいことは?
普通の洋服屋っぽくないことをやっていきたいですね!例えば「地方都市を元気にする洋服屋」とか。地方には僕みたいにお店の二代目や三代目で経営に困っている人たちっていると思うんです。色々な地方都市を回って、そういう人たちのコンサルタントをやりたいです。地元の専門店がなくなると、卸業者さんも困るし、アパレルメーカーも衰退しちゃうんですよね。そうなると買い物をする地元のお客さんも困ってしまうわけですよ。地元に良いお店を残していく、そういうお力添えができないかなと真剣に考えているところです。僕の成功事例を展開する、そんなことが将来的にできたらいいですね。
- 今のお仕事に就いていなかったら何をしていましたか?
海外旅行が大好きなので、旅行会社なんかいいですね。人を喜ばせるのが好きなので、向いてると思いますよ。
英語がしゃべれないことが玉に瑕(きず)なんですが(笑)
- アイデアが浮かぶ場所・リラックスできる場所は?
アイデアが浮かぶのは閉店間際の1時間、このテーブルに一人で座っている時ですかね。(下部画像参照)一人になれる時間ってなかなかなくて。お風呂もこどもたちと一緒に入るので…。娘が何歳まで一緒にお風呂に入ってくれるか、ギネス記録に挑戦したいです(笑)
リラックスできるのはやっぱり家族のいる家ですね。
- 過去の自分・未来の自分へのメッセージは?
過去の自分へは「もっと暴れろ、もっと失敗しろ」って言いたいですね。丸井でのサラリーマン時代は色々なものに守られていてすごく恵まれていたんですね。だから、若いうちにもっと暴れていろいろなことを吸収しておけばよかったかなって。
未来の自分は一つでいいから、自分がやってきたことを何か形として残していたいですね。僕の夢はこどもが店を継いでくれることなんです。僕ら夫婦の店と娘の店の二店舗とか、そういうのが残せたらいいですね。
- 2015年12月20日(日)ドレスアップクリスマスパーティをla table de KUDO(ターブル・ドゥ・クドゥ)で開催します。
大人が「おしゃれ」をして楽しめるパーティです。
お問合せはISHIKAWA-LABOまで。
TEL 055-975-1814 - 石川さんが出演されているラジオ番組「おつまみちょ~だい」
毎週土曜日19:00~19:30、VOICE CUE FM 77.7MHzにて放送中です。
http://777fm.com/blog/cat57/

石川 英章さん
有限会社石川商店
ISHIKAWA-LABO代表
1975年、静岡県三島市生まれ。
1997年、(株)丸井に入社し、以後14年間勤務。
2011年、(株)丸井を退社、有限会社石川商店に入社。
2013年、事業承継後、代表取締役に就任。
2014年、「ブティックいしかわ」から「ISHIKAWA-LABO」に屋号変更。ケンブリッジの森 藤原氏デザインで店舗を改装。
2015年、ISHIKAWA-LABOネットショップオープン。
オーダースーツ事業を開始し、2年目で年商1500万円を達成。
- 好きな本
「オーダーメイドスーツを着る人の成功習慣」 松井 拡運(著)
いただいた本なんですけど、経営者を対象とした本でおもしろかったですよ。
- 聞いている音楽
Studio Apartmentというユニットが好きです。中でもBeautiful Sunriseという曲が好きですね。ジャンルはハウスになるのかな?あとはm-floも好きです。スタイリッシュでおしゃれな曲が好きです(笑)
http://ishikawa-labo.com/
インタビュー・文=塩道 美樹 / 写真=ISHIKAWA-LABO、塩道 美樹
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